「―――っくしゅ」
 これで今日十一回。遂に両手の指の数を超えてしまったくしゃみの後、ジタンはすん、と赤くなった鼻を啜った。別に体調を崩した訳ではない。こう見えて体の丈夫さには自信がある。だからこれは、純粋な寒さから来るものだ。時空の歪みが近くに氷山でも連れてきたのか、今朝からやけに辺りが冷えこんでいる。
「へ…っくしゅ。あー…」
 十二回目のくしゃみをしたところで、頭からふわりと暖かいものが降ってきた。視界の端をちらつく、淡い紫色。
「―――セシル?」
 見上げた視線の先では、何時からそこにいたのか、やはり白銀の青年が静かに微笑んでいた。
「大丈夫かい?今日は冷えるから…、その格好じゃ寒いだろう?」
 ということは、この薄紫の正体はセシルのマントだ。肩を抱き寄せられるようにして、文字通り頭からすっぽりと、上等な布の中に招き入れられている。
「あ、僕に近づきすぎると危ないよ。鎧、多分冷たくなってるから」
 おまけにそつが無い。妻子持ちの余裕というやつだろうか。レディのような扱いには言いたい事も山ほどあるが、背に腹は代えられない。有難く包まらせてもらう。
「…けど、オレの他にもいるじゃん、寒そうな格好してる奴。ティナとか、バッツとかさ」
「ティナにこんなことしたら、隣にいる小さなナイトに怒られちゃうからね。バッツは…彼は、何ていうかさ…」
 何となく、平気そうじゃない?
 稚気を含んだ耳打ちに、ジタンはぱしぱしと目を瞬かせると、呆れたように肩を竦めた。
「セシルも、スコールと同じ事言ってら」
 何がおかしかったのか、ジタンの言葉にセシルが小さく吹き出す。首を傾げれば、彼は珍しく声を立てて笑うのだった。





セシルと。場所は秩序の聖域あたり。なんか白くて寒そうだし←
空前のセシルブーム継続中。バロン国王さまはこのくらいサラっとやってのけるよ!(笑)


2009.10.25